NHKってやっぱりいい番組作るよ

母さんがNHKのプロフェッショナル仕事の流儀を録画してくれていたので見ていた。
今回の出演者は小池 康博さん。肩書きは「科学者」。肩書きが科学者というのも珍しいよなあ。何とかセンター長と書いてあるのはよく見るけど。鉄腕アトムを見て幼稚園の頃から「科学の力で世の役に立ちたい」と夢見ていたそうな。この人が有名になったのは不可能とさえいわれていた「プラスチック製光ファイバー」を実用化したからなんだけれど、まずそのアイディアが大胆。プラスチック製光ファイバーは中を直進する光と折れ曲がって進む光とで到達時間に差ができてしまうので通信には使い物にならなかったのだけど、この人はファイバーの真ん中に不純物を混ぜて直進する方の光を遅らせようと考えた。でも実験してみると光が6mしか届かない。それは直感的には当たり前なのだけれど、光学の方程式によれば不純物があっても光が弱まらない条件があるはずだという確信があったのだという。うまくいかない原因を、原理原理と根本に立ち戻って調べ、実験し続ける。14年間、成果は出なかった。
原因を突き止め、一気に光の到達距離が延びると、感慨より先にむしろこれを使えばあれができる、これができる、と考えていたとか。そのあとの最近の研究のところもいろいろと心に残るところがあったが省略。

14年間だよ、14年間。気が遠くなる。それだけに言葉にも重みがあった。新たな光ファイバーを作る、企業との合同プロジェクト。リーダーに大学院生を抜擢し、その大学院生の斬新なアイディアが小池さんにも予想以上の結果を出す。濁りが出たので、そのままの品質だと光ファイバーにはできないのだけれど、生産ラインの性質を考えれば大丈夫なはずだから企業に渡そうと言った大学院生に、「こういう考え方をするのは世界でたぶん君が初めてだろう。でもそれだけに責任もある。生みの親である科学者が、こういうものができる、と言って完全なものを企業に渡さなければならないんだよ」という感じのことを言って諫めていた。「散乱ってのはね、一筋縄ではいかないんだよ」って言葉には14年分の感慨がこもってるんだろうなあ。